── 墨を生かす──
菜種から生まれる澄んだ墨、あるいは時を経て腐らせた深みある墨。
それぞれの個性を受けとめ、濃淡やにじみを通じて、ただ黒を超えた無限の表情を引き出す。
墨をする静かなひとときは、心を整え、描く者自身を清める行いでもある。
墨の歴史
墨は約2000年前の中国漢時代につくり出され、
約1400年前の飛鳥時代に朝鮮半島の高麗を経て日本にもたらせれた。
墨は数千年の年月に耐える記録材料として、歴史と文化を語り伝えて今日に至っている。
朝廷のあった明日香の地で始まった日本の墨づくりは、還都とともに奈良へ移る。
その後、都が京都へ移ってからも多くの社寺があることから奈良は学問の中心として栄え、
写経などの学問に必要な墨を作る工房は奈良に留まり今日に至る。
当初は松煙と膠を原料とした【松煙墨】の製造だったが室町時代初期に
興福寺二諦坊の燈明の煤を集めてつくった【油煙墨】が製造され、
黒味の強い光沢のある良質な【奈良墨】の名声は高まった。







